今から約10年前、書店を訪れ、ある本の表紙を見た時に、一瞬にして引き込まれた本がありました。紅葉の中、風を切り、自転車に乗って気持ちよく走る姿。ベニシア・スタンリー・スミスさんの本です。
ベニシアさんはイギリスの貴族に生まれ、貴族の社会に疑問を持ち、インドに旅をしに行きます。その後京都の大原に移り住まれ、英会話の教師をしながらご自宅での暮らしを楽しまれている方。ハーブガーデンを作りながら、丁寧な暮らしを送り、手づくりを楽しみ、自然を慈しむ。穏やかさと、優しさに溢れている方です。
当時、社会人になりたての私は、そんなベニシアさんと、ベニシアさんの暮らしに憧れを抱きました。
庭で採れたハーブで料理をしたり、コスメを作ったり。自然のサイクルに身を任せ、植物や虫の声を聴き、季節を感じながら暮らす。まさに自然と共生する、ということを実現していらっしゃる方でした。
当時は東京のオフィス街で仕事をしていて、土や緑がないコンクリートだらけの街に心が苦しくなっていました。緑のある場所を求めて、公園や庭園、休日には山登りやキャンプなどをして、自然と触れ合う時間を作っていたなと思います。四六時中パソコンの前にいることもしばしば。気が付くと、呼吸をしていたかな?と思うぐらい、時間に追われていたことも。おそらくそういう時は、ゆっくりと大きな呼吸はできていなかったと思います。。パソコンの中に顔が吸い込まれてしまうような感覚を持ったことも笑
『田舎でゆっくりと、丁寧な生活をしてみたい!』そのような願いを心の内にひっそりと温めながら約10年。時を経て、その思いが実現しました。
先日、本屋さんへ行くと10年前に出会ったベニシアさんの本は、通り過ぎる人の誰もが目にするであろう場所に、並べられていました。10年経ってもなお、愛され続けられる本。愛され続けられる暮らし。生き方。
この時、何年たっても色あせないとはこのことか。むしろ、今の世の中にはすごく求められている生き方なんだ。と感じました。
まだ始まったばかりの田舎暮らしですが、ベニシアさんのようにずっと愛される暮らし、生き方を目指していきたい。10年後の未来にワクワクした瞬間でした。